ある塾講師の履歴書(21)「お前、今辞めるなよ」
新米教室長として新校舎を立ち上げ、
幸先こそよかったものの、
責任あるポジションに慣れていなかったり、
他にも運営上のいろいろな問題もあり、
1年目は散々でした。
フルタイム23連勤を経験したのもこの頃です。
体も心もボロボロで、
もう辞めてしまおうかと、
思った矢先のことでした。
近くの、本部を兼ね備えた校舎に
用があって帰りに立ち寄ったところ
食事に誘われました。
チェーン店の居酒屋での夜中の食事です。
直接の上司ではありませんでしたが、
とても仕事ができて、若くして本部長職に就いた
先輩から言われました。
「お前、今辞めるなよ!」
「今お前はとても辛いだろうが、
今お前が辞めたいと言っても、多分誰も止めないだろう。
ここから頑張って持ち直すんだ。
辞めたいと言った時に、
ちょっと待ってくれ、今すぐ部長職を用意するから、
と言われるくらいにならなければだめだ。
そうしないと、お前の人生これからも負け続けるだけになってしまうぞ。」
なるほど、その通りだと思いました。
とは言っても自分が部長職などできるような
力がないことも同時にわかっていました。
よし、あと1年気持ちを入れ替えて、
いろいろ経営のこととかも勉強して校舎を立て直そう。
そして1年後にやめよう。
翌年校舎は黒字経営にもなり、
周りからも、あいつは変わった、と言われるようになり、
ある先輩の教室長からは、
社員旅行の電車の中で隣の席になった時に、
「ねえ、なんでこんな急に変われたの?」
と聞かれたほどでした。
能力がありすぎて、評価は分かれる方でしたが、
当時の若き本部長にはとても感謝しています。